観を磨き、思いをつなぐ 岐阜県小中学校長会

岐阜県小中学校長会  会長  岩佐 優

 

■観を磨く

このたび岐阜県小中学校長会の重責を担うことになりました。微力ですが、精一杯努めますので、会員の皆様のご支援をいただけましたら幸いです。

さて、世界における対立と分断の深刻化は、平穏な日常が脅かされ基本的な価値が揺らぐという事態をもたらしました。また、国内情勢に目を向けても、政治・経済の不安定さ、想定される大規模地震や気象変動に伴う災害の激甚化・頻発化など、社会環境は急速かつ複雑に変化しており、予測が極めて困難な時代を迎えています。

私たち校長は、教育におけるグローバル化の進展や人工知能(AI)の飛躍的な進化による様々な改革等の方向性を見極めつつ、児童生徒や地域の実態を踏まえた特色ある学校教育を目指しているところです。学びや価値観の多様化、コンプライアンス、ハラスメント、働き方改革等、どれも時代の流れとして大切にすべき観点ですが、今一度、学校とは何か、義務教育の値打ちをどう考えるかを論じ、そしてそれを具現できるかに小中校長の真価が問われると思うのです。

このことを考えていて、三上満さんの「眠れぬ夜の教師のために」を思い出しました。私が教職2年目に出会った一冊から、印象的な部分を紹介します。

・教師の仕事は、不完全な教師が、不完全な子供たちと不完全さを共有しながら育ち合っていくというもの。だから、教師は、特別に選ばれ教師用に育てられた人であるよりも、ごく普通の人として教師になることの方がずっと大切で、意味のあることです。

・教育の仕事には「厳しさ」を欠いてはなりません。厳しさを欠いた教育は、子供たちを馬鹿にした軽蔑した教育だと思います。厳しさとは「質の高い要求」であって、優れた教師はみな「要求」の高い教師です。

・教師の仕事には、中途半端な宙ぶらりんに耐えて「灰色の値打ち」を大事にしなければならない場合がよくあります。発展途上である子供のもつ灰色の部分を大切にしたいものです。後に、三上満さんが「金八先生」の実在モデルだと知って驚くことになりました。

■思いをつなぐ

岐阜県小中学校長会は、全連小や全日中といった上部組織を持たず、岐阜県独自の活動を展開しています。その歴史を遡ると、昭和22年の新学制実施に伴い結成された「岐阜県六三校長会」が起点になります。六三校長会は、郡市ごとの単位組織を基に、全県で団結し、小・中学校部会を擁しながら各郡市の連携を図り、岐阜県教育の進展に寄与しました。現在の小中校長会は、その趣旨を継承し、行政や他団体との連携、今日的な課題に関する研修を主な目的としています。そのため、教育問題審議会や各専門委員会を組織し、年々工夫を重ねています。

特に、他県に類を見ず、岐阜県独自に歴史を重ねてきた取組として、出版事業委員会の活動があげられます。先日、校長会館のバックナンバーから、自分が小学生の頃に使った「夏の友」を手に取ってみました。実に五十数年前のことですが、当時の記憶が断片的に浮かび、お世話になった担任の先生との思い出や編集に携わっていただいた見知らぬ先生方に思いを馳せる時間となりました。

 

以上のように、県行政や団体に校長の声を届けること、各郡市のより良い取組につながる連携を充実すること、その基盤となる各委員会等の活動を持続可能なものとして発展できるよう努めてまいります。