生徒主体の持続可能な令和の中学校教育
岐阜県中学校長会 会長 平塚 剛
1 岐路に立つ中学校教育
日本の公教育は1872(明治5)年の学制発布から155年、現行の公教育は1947(昭和22)年の民主化に基づく新制中学校から80年を迎えています。この間、いかに時代が変わろうとも、中学校教育は、学校教育の普遍的な目的である人格の完成(幸せな人生)と国家・社会の形成者の育成(よりよい社会)において、よく機能してきました。
しかし、今、中学校教育は過渡期を迎えています。1990(平成2)年からの30年間で、生徒数は6割に減少しました。しかし、いじめの認知件数は6倍、不登校生徒数は3.9倍、自殺者数は2.9倍、特別支援教育は制度改正がなされた2007(平成19)年からの13年間で特別支援教育を受ける生徒数は2.6倍、通級による指導対象生徒数は11.5倍へと増加しています。
生徒数が減少しているにも関わらず、こうした教育課題の増加は、生徒を丁寧に把握しようとするきめ細かな教育の証といえます。しかし、いじめ・不登校等の増加は、公教育の在り方そのものが問われていると言えます。
この状況は、教職員にとっても同様です。多様化・複雑化・困難化する教育課題への対応により、長時間勤務や心身の疲弊に伴って健康を害する者は増加し、教員志願者は減少し、休職等があっても補充者がいない状況となっています。
よく機能してきた画一・一斉・競争に基づく担任による学級を母体として展開する公教育は制度疲労を起こし、生徒にとっても、教職員にとっても、持続可能性が問われる状況となっています。
社会に目を向ければ、こうした公教育の制度疲労は、保護者の教育への関心に基づく教育格差(メリトクラシーからペアレントクラシーへ)やそれに基づく社会の階層の固定化(階級化社会)をもたらし、日本の平和で民主的な社会の構造を変え、分断を招くおそれすらあります。
2 生徒主体の持続可能な令和の中学校教育
私たち中学校長会は、中学校教育の責任ある主導者として、県・市町村・校区の負託に応え、教育課題の解決に資する実践を創り出さねばなりません。
求めるのは「生徒主体で持続可能な令和の中学校教育」です。重視すべきこととしてキーワードを列挙するのであれば、「安全・安心な環境の確保」、「学習機会の保障」、「社会性の伸長」、「生徒・保護者・地域との信頼」、「生徒主体」、「不易と流行」、「一斉と個別・協働による探究的な学び」、「多様性」、「選択・判断・決定」、そして「働き方・働きがい」となります。
3 研修の充実と関係機関との連携・協働
中学校長会の主たる活動は「校長の資質向上を図る研修の充実」と「課題を解決するための関係機関との連携・協働」です。
① 校長の資質向上を図る研修の充実
研修で大切にしたいことは、喫緊の課題についての理解を深めることです。その指針となる「方針と重点」と「研究主題」は、6月に開催される「研修総会」で提案されます。
喫緊の課題に対する「校長の指導性」を具体化するのが、「各地区の研究推進」であり、「学び合う」のが11月に開催される「研究総会美濃地区大会」です。これらの研修を通して、校長の資質向上を図ります。
② 課題を解決する関係機関との連携・協働
教育課題は学校だけでは解決しません。特に進路指導や生徒指導では、関係機関との連携・協働なくして解決は図れません。
進路指導においては、県教育委員会・公立高等学校長協会・私立中学高等学校協会との長年の信頼関係に基づき、「入試の一本化、全員への学力検査の実施をはじめ、高校見学の生徒申込み、部活動における中高連携(申合せ事項)、保護者への直接説明、WEB出願、調査書の精選とデジタル送付、受検上の配慮、追検査・二次選抜、試験日の引率廃止、要録(写)の原本証明の廃止」等、生徒の主体的な進路選択や誤りのない進路事務を実現するための改善がなされてきました。
生徒指導においては、県教委学校安全課を通した警察・福祉部局等との共通理解に基づいて、安全管理・教育の充実を図ってきました。
今後も「関係機関との連携・協働」により課題の解決を図ります。
4 迅速に組織として活動する中学校長会
中学校長会は「研修の充実」と「関係機関との連携・協働」とともに、「迅速に組織として活動」することを通して、生徒主体の持続可能な令和の中学校教育を求めます。
どうぞ、よろしくお願いします。
