「不易」と「流行」を見極め、進む小中学校長会

  岐阜県小中学校長会   会長  梅村 高志

■このたび岐阜県小中学校長会の重責を担うことになりました。微力ではございますが、精一杯努める所存です。会員の皆様には、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

■さて、令和の幕開けとともに教育現場は未知なる新型コロナウイルスの影響を受け、それまで経験のない緊急対応に奔走しました。さらに、子供たちがやがて直面する社会構造は、少子高齢化や高度情報化、あるいは不安定な国際情勢や気候変動によって急速かつ複雑に変化しており、予測が極めて困難な時代を迎えていると言わざるを得ません。

松尾芭蕉が説いたとされる「不易」と「流行」という言葉があります。教育における両者は、もとより対立概念ではなく、変化に即した流行を追求する中で、決してぶれてはならない不易というものが、いっそう明確なものとなる、この考えのもと新時代のスタートラインに立つことの重要性を感じます。

ある識者によれば、「30年後、学校は存続するものの、教科指導の領域では人間よりも洗練されたAI教材が教授スキルに優れ、成果は上がるであろう」といった辛辣な見立てもあります。その一方で「将来、教師は不要となる」という論調をいまだ耳にしません。そこには「人間教育」への揺るぎない期待があり、教育が持続的に担うべく使命と責任が介在するものと確信します。「変化に富む時代を生き抜く心豊かでたくましい子供を育む」という到達目標に対して、真正面から挑むことができるのは、我々人間・教師に他なりません。

時に、現代人にとって自分が望むことを最優先に選択できる時代が訪れつつあると言われます。いわゆる「I(私)の時代」です。今やあらゆるサービスが個のニーズに合わせてくれる。TVのオンデマンドなどはまさに「お好きな番組をいつでもどうぞ」といったある意味、ご都合主義の象徴であり、ひとたびこの風潮が間違った形で教育に持ち込まれたなら心配です。学校は自分が望まなくても今すぐやらねばならないこと、自分には不都合であっても公共にとって有益なことが山ほどある中で、優先順位や絶妙な折り合いを学ぶ場所でもあるからです。

また昨今の争いが絶えない世界情勢を子供たちにどう伝えたらよいか、適切な言葉が見つかりません。確かに実社会では、お互いが理解できることばかりではありません。しかし、たとえ心から分かり合うことが困難だとしても、共有部分を精一杯探りながらせめて最悪の事態を回避する知恵と理性が求められるはずです。これからの多様な共生社会を生きる子供たちにとって大事な力は、異なる価値観をもった人々とも折り合いを付けながら、よりよく生きる力ではないでしょうか。

新たにスタートした「第4次岐阜県教育振興基本計画」の重点施策の一つ目に『多様な人とつながり、関わる力の向上と心の教育の充実』があります。コロナ禍で様々な活動が制約される中、本来学び合いを通して育まれる対人関係力が弱まっているとすれば強化する必要があります。言わずもがな、自己と他者の間に優先的概念はなく「他を思いやりながら、自己実現を図る力」を今こそ育まねばなりません。

■山積する様々な課題に対して、それぞれの本質を見極め、柔軟かつ適正に対処する上で、大きな力を発揮するのが志を共にする私たち小中校長会です。本会にはこれまで諸先輩方が綿々と紡いできた歴史と経験があります。この強みを生かし、会員相互のつながりをいっそう強固なものに高めながら、子供たちの幸せと教職員にとって働きがいのある職場環境をめざして、力強く前進できるよう、皆様のお力添えを心よりお願い申し上げます。