一人一人の知見を生かし、連携と連帯で学び合い・支え合う中学校長会に
岐阜県中学校長会 会長 廣瀬 良
この2年間、新型コロナウイルス拡大防止対策として研修総会、研究総会は中止またはオンラインでの開催となりましたが、昨年度の研究総会は高橋会長を中心に校長会独自に会議システムを構築したことにより、今後の校長会の活動の在り方にも新たな可能性を見い出せた1年であったと思います。まだまだコロナ禍で先行きが不透明な中で、会長という重責を担うことになりました。微力ではございますが、会員の皆様とともに精一杯歩みたいと考えております。ご支援いただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、1980年代に刊行された外山滋比古の著書「思考の整理学」の冒頭、日本の教育を自力では飛べないグライダーに例え、受動的に知識を得ているだけの人間を育てていることに警鐘を鳴らしています。このままでは、当時出始めたコンピュータという優秀なグライダーに、自分では飛べない人間は仕事を奪われてしまうとも書かれています。刊行から40年近くが経過し、外山氏が懸念していた「人間がAIに仕事を奪われるという現実」も見えるような世の中になりつつあります。また、新型コロナウイルスによる様々な制約、ロシアのウクライナ侵攻による世界的な経済不安、戦争に対する恐怖等、「予測不能な現代社会」という言葉はさらに現実味を帯び、複雑化していることは間違いありません。
教育現場においても、いじめ、不登校、SNSのトラブル等の生徒指導上の諸問題、教員不足、未補充による教職員へのしわ寄せ、若手教員の育成、不祥事根絶、働き方改革、部活動の段階的な地域移行、先の見えない中体連改革、指導と評価の一体化、GIGAスクール構想、登校できない生徒の評価、自然災害への対応等々、悩みが尽きることがありません。
しかし、このような状況にあっても、校長はどの学校においても日々発生する諸問題に対してリーダーシップを発揮し、生徒一人一人の幸せと、教職員が笑顔で勤務できることを最大の目的として、冷静に判断し、指示を出し、確認する作業の繰り返しではないでしょうか。
1 レジリエンス
レジリエンスとは、「折れない心」「弾力性」「回復力」「しなやかさ」を表す言葉です。心理学においては、トラブルや困難な状況の際に逆境をはねのけて回復することとして使われており、ビジネスだけでなく、予測が困難で変化の激しい現代社会において、困難や逆境を乗り越え回復する力としてレジリエンスの必要性が高まっています。レジリエンスを高めるための要素として、笑顔の大切さ、アンガーマネジメント、自分が心を打ち明けられる人をつくること、苦しい時には助けを求められる人がいること、自分一人ではないと実感できることが大切だといわれています。つまり、レジリエンスを高めるためには、普段から、「周りの人や自分自身とどう向き合うのか」ということが大切であり、この考え方は生徒や教職員だけでなく、校長である自分自身に置き換えれば、同じ悩みを共有できる校長会という組織の存在の大きさを実感しています。
2 今こそ連携、連帯へ
前述したとおり日々の不安は尽きませんが、様々な課題に対して「しなやかに」対応するためにも、正しい情報を収集し、それを見極め、何が必要かを判断し、行動していくことが何より大切です。私たちにはこれまでの経歴や勤務を通して様々な知見があります。ただ、体操の内村航平選手のように全ての分野においてトップレベルの判断ができるオールラウンダーのような人は本当に限られています。だからこそ、校長会という組織という縦と横の連携から、自校での実践のヒントを得たり、自分がやろうとしていることの方向性を確かめたり、悩みを共有したりすることが大切です。また、中学校長会には、これまで諸先輩が綿々と紡いできた歴史があります。それは研究推進と実践、進路指導に係る多方面の機関との連携等が大きな財産として継承されています。このような中学校長会の強みを生かし、生徒一人一人の幸せと教職員の笑顔を願い、会員相互の連携と連帯で学び・支え合う組織となりますよう、皆様のご支援をいただければ幸いです。1年間どうぞよろしくお願いいたします。